神経発達症とは、生まれつき脳機能の発達に偏りがあるために、忘れ物やミスが多い、対人コミュニケーションが上手くいかない、空気が読めないなど、日常生活に困難が生じる障害のことをいいます。
症状の現れ方には個人差があります。その特性は外見からはわかりにくいため「自分勝手」や「わがまま」等と捉えられたり、「反省をしない」とか「親のしつけに問題がある」と言われたりすることも少なくありません。人間関係や仕事などで上手くいかない状況が続き、自信喪失や抑うつ気分、不安感を訴えて受診をする患者さんの中に、この障害が根底にあるケースがあり、大人になって初めて診断を受ける場合も多くあります。
神経発達症は、決して本人の意欲や努力の問題ではありません。本人や周囲の人がその特性を正しく理解し、適切に対応することで状況の改善が期待できる障害です。
以下、代表的なものとして、自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠陥多動性障害(ADHD)について説明します。
自閉スペクトラム症(以下ASD)の原因は明らかになっていません。生まれつき、脳の中枢神経系という情報を整理するメカニズムに特性があり、できることとできないことにばらつきが生じている状態だと言われています。
その特徴としては、
① 対人関係や社会的コミュニケーションの困難(人の気持ちを推測したり場の空気を読んだりすることが苦手、自分に興味があることを一方的に話すため会話が成り立ちにくい等)
②特定のものや行動における反復性やこだわり、感覚の過敏さまたは鈍麻さ(自分で決めた順序やルールに拘りが強い、急な予定変更や環境の変化があると混乱する、特定の音や光・臭いなど感覚刺激への偏った反応がある等)
などがあげられます。幼少期からみられ、知的障害を伴うこともあります。
ASDは病気ではなく脳の機能的な障害です。そのためそれ自体の治療ではなく、ASDの特性から生じている困りごとについて様々な対策を考え、実践し、生活のしづらさを軽減させていくことが大切です。
薬物治療としては、イライラや癇癪については抗精神病薬を処方することがあります。また、二次的な抑うつ気分や不安感について、抗うつ薬や抗不安薬等で症状を緩和していきます。
注意欠如多動症(以下ADHD)の原因もASDと同じく明らかではありません。
脳の発達の偏りが関係しており、脳内のドーパミンと言う神経伝達物質が不足してバランスが崩れ、異常が起こっていると考えられています。また、遺伝的要因や環境なども複雑に絡み合って症状が現れると言われています。
その特徴としては
① 不注意(集中できない、ケアレスミスが多い、忘れ物・無くし物が多い、計画的に物事を進められない等)
② 多動性(じっとしていられない、おしゃべり、順番を待てない等)
③ 衝動性(考えるよりも先に動く等)
が、あげられます。
ADHDと診断される場合、①~③全ての症状が認められる場合もあれば、一部が強く現れている場合もあります。
また、個人差はありますが、大人の場合は子供の頃と比べて多動性が弱まり、不注意が目立つ傾向にあるようです。周りから「無責任」とか「だらしがない」などと誤解され、仕事に支障をきたしてしまうことで、本人は自信を失い、うつ病や不安障害などを発症することも少なくありません。
ADHDもASDと同じく脳の機能的な障害です。本人や周りの人がその特性を理解して適切な対処法を身に着け、適切なサポートを受けることによって改善が期待されます。
次の2つの組み合わせることが有効だとされています。
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